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ノーカントリー NO COUNTRY FOR OLD MEN

よかったぁ

「え、これでお終い?」
エンドロールが流れはじめた瞬間、ショックを受けた。なんのカタルシスもなく、無力感に襲われたまま。
でも映画館を出てからもずっといろいろと考えさせられる作品だった。
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終わりにショックを受けただけで内容は単純に追走劇としてみても面白く、荒涼とした乾いた平地(この最初のシーンの画すごく好き!!)や夜のモーテルの映像、どちらも逃げ場のない緊迫感ががありそれは最後まで続いた。
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観終わって浮かんだ映画が二つ。一つ目は同じコーエン兄弟作の『ファーゴ』。平凡な世界に暮らす警官と金目当で起きる愚かで悲しい殺人事件の対比。二つ目は『セブン』。連続殺人と世紀末的な空気。
どちらにも似ていてしかし明らかに質の違う殺人。『セブン』では殺人者なりの美学や哲学があった。だがシガーには人を殺すことに対する特別な感情がない。明確な動機がないわけではなく、しかしその動機はただ「邪魔だから」。「すみませんが通して下さい」と言うのと同じ感覚で人を殺す。そしてその方法はとても合理的。
凶悪な犯罪者が出た場合、よくTVなどで評論家や専門科が心理や原因について議論する。そういったものが全く意味をなさない殺人者。
保安官はそんな事件に直面し諦観して辞職する。彼が若いころは保安官が世の中の秩序を保つことに一役買っていた、そういう自負もあったことだろう。しかしシガーのような犯罪者に一般的に考えられている常識は通用しないし原因を見つけて解決できるものでもない。一保安官の力ではどうにもならない。
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この作品、トミー・リー・ジョーンズ演ずる保安官が主人公なのだけど彼の存在は薄く、結局なにもできないまま終わる。観ている私達に近い人物ではないだろうか。(いや、そうあってほしいと願う。シガーのような人たちばかりだったら落ち落ち他人と他愛のない会話もできないもの。)
彼の無力さは、わけの分からない殺人事件の多い今の社会を憂いながらも何もできない自分の非力さと同じ。
『ファーゴ』では警官と、金を巡って罪を犯す滑稽な人間とは生きている次元が違うように見えた。今回も保安官はモスやシガーと別次元にいるように見えるがそうではないことを強く感じさせられる。
今までのコーエン兄弟の作品にもヘンな人が出てくる。そして浮いている。しかし、シガーは今まで以上に強烈にヘンなのに違和感なく納まっている。それはこの世界がヘンであることを前提に存在するからに他ならない。
シガーは彼の世界とはまるで縁のなさそうに見える人々の前にも突然あらわれて命を奪う。金に目が眩んだ人間が争うだけでなく穏やかに暮らしたい人間も巻き込む。二つの世界は別の次元にあるのではなく同じ場所に存在するのだ。だからこそ保安官は憂う。
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シガーは事故にあっても死なない。死んでいれば並みの映画になっていただろう。観客が望んでもそうしないのはそこに明確な意味があるから。
誰の身の上にもいつ何が起こるか分からない。だからといって悪いことをした人間に必ずしも制裁が下るという訳ではない。
保安官が話したチャーリーに起きたこと、シガーの事故、これらから「運命」という言葉が浮かんだ。
コインの表か裏を当てろと言われるがモスの妻は拒否する。彼女にはそれが運命だと分かっていたのだろう。
出会った人間が善いか悪いかそれは運だ。自分がルールを守っていても起こる事故も運だ。結局罪を犯したから死ぬわけではなく無情な殺人者に殺されるのも生き延びるのもそういう運命だと思うしかない。だから何をしてもいいという訳ではなく、保安官の夢の話が暗示するもの、暗闇<混沌とした現代社会>の中の小さな明かり<希望や指標>を頼りにそれぞれに自分の人生を全うするだけなのだ。
2007年/アメリカ映画/2時間2分/カラー/配給:パラマウント/ショウゲート

監督+脚本:ジョエル・コーエン+イーサン・コーエン
原作:コーマック・マッカーシー
製作:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン/スコット・ルーディン
撮影:ロジャー・ディーキンス
編集:ロデリック・ジェインズ (イーサン・コーエン+ジョエル・コーエン)
衣装:メアリー・ゾフレス
音楽:カーター・バーウェル

出演:トミー・リー・ジョーンズ/ハビエル・バルデム/ジョシュ・ブローリン/ウッディ・ハレルソン/ケリー・マクドナルド/ギャレット・ディラハント/テス・ハーパー/バリー・コービン/スティーヴン・ルート


テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

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